<< ディスタンスというものー映画『コロンバス』に寄せてー | main | ピュシスとロゴスの間で生きる人間という存在にー漫画版「風の谷のナウシカ」を起点とする『コロナ新時代への提言2』をみてー(1) >>
2020.07.27 Monday

元町の路地にー再開した「花森書林」の店内を撮影してー

 今年の梅雨はまだ終わらないようです。早く明けてほしい気もしますが、数日して太陽ギラギラで猛暑がやってきたら、マスクを付けた屋外での作業など暑くてたまりませんなどと書いていそうです。

 前ブログ(2020.7.21「ディスタンスというものー映画『コロンバス』に寄せてー」)で紹介した映画をみた土曜日(7/18)の午後に、再開した古書店「花森書林」を訪ね、店主に頼んで店内を撮影させてもらいました。

 コロナ禍で、花森書林は4月13日に臨時休業し、80日の休業期間をへて7月2日に店を再開しました。先月に店主から再開準備に日にちをかけるつもりと聞いていたとおり、再開後、最初に訪ねたとき(7/4)、店内の様子にはだいぶ変化がみられたのです。ですから、今回、撮影した写真を使って、花森書林の店内を、「口笛文庫」に続いて(2020.6.10「六甲の坂の途中にー「口笛文庫」のたたずまいー」)、紹介できたらということになりました。

 パンデミックの始まった2020年という特別な年に、神戸元町3丁目の路地にある「花森書林」の店内の様子をスケッチしてみるというのも何かのご縁でしょう。所詮は、私の記憶のためのノートということであり、不十分なものになりますが、私といっしよにのぞいてみていただければと願っています。

 

 さて、花森書林の店内の様子をメモしようとして最初に気づいたのは、よく足を運んでいるといっても、実際は限られた部分の棚しかみていなかったなあということであり、だから、レイアウトや棚の本の並べ方が変化したといっても、従前の店内の本棚について記憶がマダラでしかないという事実でした。

 今回、改めて眺めてみたら、こんな本もそしてこんなに雑貨もおいているのかという新たな発見もありましたので、できれば気になった書名や著者名を書き添えてみたいと思っています。また、営業時間帯で、店主の話を十分に聞けたわけではありませんが、再開準備で店主のめざした方向性を少しは想像することもできましたので、そのあたりのこともメモしておくことにします。

 なお、花森書林は、昨年2月にそれまでのトンカ書店から場所を移転し店名も変更して開店したのですが、その際の店主の思い、こころざしは当ブログで紹介させてもらっていますので(2019.2.10「「花森書林」へようこそー「トンカ書店」ありがとうー」)、併せて読んでいただければと思います。

 

 では、元町3丁目、JR線の南側、「洋食ゲンジ」の角を南へ下ってすぐのところに「花森書林」はあります。全面ガラス入り口()には、手指消毒液とともに、従前からの「古本・雑貨」のプレートが立てられています。奥行きの深い店内です。もう少し近づくと()、「ほんのみせ はなもり」の下に「マスク着用中」が貼ってありました。

 さあ、中へ入りましょう。

   峅嵜構駑咫廚料慣福[2020.7.18撮影、以下同じ]

  右側のドア上部

 店内に足を踏み入れ2mくらいのところから全体を撮影しました()。大きくは左壁部中央部奥壁部、そして右壁部の4つのパートに分かれています。

 なんといっても、今回のレイアウト変更で目立つのは、中央部です。入り口からまっすぐの導線が確保されていますし、あとで見ていただくとおり、中央部の奥の方に文庫や新書等の棚が左右の壁部と平行して細長い直方体でつくられていたのが、今回、3つの部分に区分したうえで、それぞれが斜めに並べ替えられていたことです。従前に比べ新たな通路が確保されています。

 ちょっと大げさですが、これはコペルニクス的な発想の転回ではないかと私は感じました。

  E稿發料慣(左から、左壁部・中央部・奥壁部・右壁部)

◉中央部の前方

 ですから、中央部から見ていくことにします。

 中央部の手前は絵本や児童書のアイランドです()。絵本箱の下側にも()児童図書がぎっしり並んでいて、今江祥智の小説『優しさごっこ』『ぼんぼん』や、雑誌『しぜん』も揃っています。

  ぅウンターから撮影した中央部の前方

  ッ羆部の前方の下部 

◉中央部の後方

 中央部の後方、今回のレイアウト変更の目玉部分です。

 前記したとおり、文庫と新書を中心とした長い両面本棚が直線的におかれていたのを3つのパートに切り分け、左右の壁に対し、それぞれ斜め方向に3列並べてあります。従前は客同士が逆方向にスムーズにすれ違うことが困難な通路でしたが、足元が整理され、滞ることなく、動くことのできるレイアウトになりました。

 左壁部の方から撮影した写真()には2列しか写っていませんが、3列あります。入り口側の第1列の前面は、CDとDVDの棚でチャーリー・パーカーの顔写真を見ました。その他の5面の棚はいずれも文庫と新書が〇〇文庫、△△新書など種類別にまとめられ並んでいます(はちくま文庫など)。

 私は視力の関係で文庫本を遠慮するようになってから久しくなりましたが、このレイアウト変更でそれぞれに通路が、空間が確保され、本好きな人には見やすく探しやすくなりました。そして、一番奥から、入り口までの導線もはっきり見通すことができます()。

 新型コロナウイルスの感染防止ということもありますが、本棚の見やすさという点においても、店主の意図は成功しているものと感じました。

  左壁部から撮影した中央部の後方

  中央部の後方の棚

  ┗壁部から撮影した中央部の後方

◉入り口すぐの左壁部

 入り口のところにもどり、入ってすぐ左の棚には()、インディペンデント系の出版社の新本が並んでいます。海文堂ギャラリー時代からお馴染みの武内ヒロクニの『しあわせ食堂』、惜しまれつつ閉店した海文堂ことが書かれた『海の本屋のはなし』(苦楽堂)、そして、安田謙一『神戸、書いてどうなるのか』(ぴあ)などが並んでいます。下の方には個人誌やコミュニティペーパーもおかれています。

 そして、そのそばに、絵本の回転棚が並んで立っています。

  入り口左壁部の新刊本等棚

◉左壁部の前方

 続いて、その左壁部は、児童書と雑貨の本棚が連続して4本並んでいます。

 2つの目の棚()には、下部を除き「雑貨」が並んでいます。これまでもおかれていたのですが、今回の模様替えで、専用棚を設けてスペースが大きくなりました。店主に面白いものは問うと返ってきたのは、毛糸編みのねずみとエスキモーの人形でした()。閉店した近くのフレンチビストロ「猫熊矢」のエスカルゴ掴みも、お客様であった縁でおかれていました。

 このパートの一番右の棚にも()、上段にはカップなどの雑貨類がおかれていて、こうしてみると、表の看板のとおり「古本」だけでなく、「雑貨」の方も一定の主張をしています。

 本の方は児童関係図書が小説、絵本、図鑑等々、ずらりと棚をつくっていて壮観です。『宝島』『ガリヴァ―旅行記』『ピノッキオの冒険』『ハイジ』などの王道本とともに、山中恒、中川李枝子、そして庄野英二『星の牧場』という作家名、書名もありました。

 それにしても、私は孫の関係で必要なときしかのぞかないのですが、前記の中央部のアイランドと合わせて、「児童書」で括ることができるのか、その質量ともなかなかな充実ぶりです。

  左壁部の前方の雑貨中心棚

  エスキモー人形と毛糸編みのねずみ

  左壁部の前方の奥側の棚

◉左壁部の後方(凹部)

 少し奥へ進むと、左壁部には凹んだスペースがあります。

 ここの壁は()、展覧会等の展示スペースにも利用されているところですが、雑誌類、写真集、絵画・デザイン関係書などが集中しておかれています。手前の小型アイランドにも外国本も含め大型本がぎっしりと詰まっています。私は写真集・写真関係書を中心に毎回のぞいていますが、「口笛文庫」と同様、自宅の飽和状態と年齢を考慮してできるだけ写真集を買わないようにしていることもあって、実際、手に入れることは稀になっています。星野道夫、本橋誠一、橋口譲二などの写真集に魅かれます。足元の方には、ダイアン・アーバス写真集があって()、表紙の双子の女の子からにらみ返されました。

 棚の上は雑誌類とムック本で、特別な何かとは店主に尋ねると、その脇にまとめられた『暮らしの手帖』とか新旧の『ポパイ』()が揃っている棚を指してくれました。『ポパイ』の背表紙には、「シティボーイのABC´13」「シティボーイABC´14」とか、そんな言葉が複数回登場しています。今やシティボーイは死語になったのでしょうか。

 そして、左の側面、ドアの上には、創刊号だという『Lマガジン』が展示されています()。京阪神の街とエンタメ情報を掲載されたこの雑誌の創刊は1977年で、休刊が2009年だそうです(私の20代後半から60歳を迎える年までとなります、ああ)。この雑誌に掲載の地図を中心に、私は街歩きによく利用していました。創刊号の表紙の女性は、一見ソフィア・ローレンかと思ったりしましたが、じっと見るとそうではないようです。

 なお、壁にかけられたTシャツは、「70」のロゴ入りでペンギンブックス70周年を記念したものだそうです。

  左壁部の後方ほぼ全景

  ダイアン・アーバスの写真集

  雑誌『ポパイ』

  亜Lマガジン』の創刊号(1977年4月号)

◉奥壁部

 奥壁部といっても、壁との間にはカーテンで仕切られた空間があって、その前に右壁部へくっつくように2本の本棚が並んでいます()。

 左側が日本文学系の単行本、右側が海外文学系の単行本が中心です。忘れてはならないのは床の敷板に直接おかれた本もあることです。日本文学系では、新旧が混在していますが、井伏鱒二、福永武彦、安倍公房たちも、それぞれ複数の本が並んでいます。新しいところだと(といっても二人とも故人ですが)、久世光彦『飲食男女』や橋本治『ぬえの名前』というような面白いタイトル本が目立っています。

 海外文学系も同じことで、チャールズ・ブコウフスキーの『町でいちばんの美女』やポール・オースターなどのアメリカ文学から、ロジェ・グルニエ、山田稔訳の『別離のとき』、カズオ・イシグロ『日の名残り』まで、渋い品揃えとなっています。いつもこの棚に来ると、小説をほとんど読まなくなってしまったなあという思いがよぎります。

 二つの本棚の最上段には、神戸に関係する本が並んでいて、『むかしの神戸』から、中村よう『肴のある旅』、『ワンダフルコウベ』まであります。

  臼壁部の全景

  憶壁部の海外文学系棚の部分

◉右壁部の後方

 奥壁部の本棚を右へと回り込むと、バラエティに富む7本の本棚が連続して入り口に向かって並んでいます。まず、このうち入り口からは右壁部の後方、奥壁部から数えると、最初の3本の棚()を紹介しましょう。

 写真の左端が広い意味で哲学・思想関係本が集まっています。多いところでは、レヴィ・ストロース、ウンベルト・エーコ、チョムスキー、日本では鷲田清一、中井久夫、そして大森正蔵『流れとよどみ』もあります。私自身が読もうとして手に入れても読まないままになっている本が散見できます。

 その右隣りは映画と落語が中心の棚となっています。この棚の映画と落語関係本の充実ぶりは特筆すべきで、双葉十三郎『映画の学校』『ウディ・アレン自伝』とか、古今亭志ん生、三木助、米朝、談志関係本から、若くして一世を風靡した山本益博の『笑いのアンコール』の書名も見えます。足元を見れば、池内紀『きょうもまた好奇心散歩』というタイトル本もありました。

 そのまた右隣りの本棚()も実に個性的です。高野文子『ドミトリーともきんす』の隣にあがた森魚詩集『アガタ・モリオ1972-1989』、その下に近藤ようこ『猫の草子』があって、下の方にはマジックの本まで並んでいます。

 書名や著者名は、撮影した写真をズームして確認しているのですが、まあ何も見ていなかった、見えていなかった、ウムゥとあきれてしまいます。

  咳κ鰭瑤慮緤の奥から2本の棚

  官κ鰭瑤慮緤の奥から3本目の棚

◉右壁部の真ん中

 そのまた右隣りに、右壁部7本の真ん中、4本目の棚があります([21])。漫画と漫画関係本が中心で、ふだん私はスルーしますが、今回撮影してみて、好きな人には垂涎の棚であることがわかります。下の方には雑貨もあります。

 手塚治虫をはじめ、白土三平、つげ義春、水木しげるなどのビッグネームも並んでいます。石子順の評論もあります。私が見ているテレビ番組の原作『孤独のグルメ』もありました。

  [21]右壁部の真ん中の棚

◉右壁部の前方

 前記の順で行くと、全7本中の残る3本([22])、右壁部の前方ということになります。このコーナーは、店主の自己評価と違うのかもしれませんが、花森書林の特質のあらわれた、真骨頂というべき棚のように感じています。どのような分類が適切なのでしょうか、広く生活文化系の本とでもいうのでしょうか。

 著者が女性である本が、もちろん男性の著者も多いのですが、相対的に多いコーナーなのです。ここで性別を持ちだすのはよくないかもしれませんが、女性の店主であることの特性が発揮されているということができます。

 一番左の棚は、3本のなかでも一般書が多く、澤地久枝、富岡多恵子、大橋歩、森まゆみなどの本が幅広く集められていて、下の方には、茨木のり子を描いた後藤正治『清冽』もあります。直接棚とは関係なさそうですが、最上段には『宮武外骨 此中にあり』が鎮座しています。先のブログ(2020.7.13「10年目の贈りものー八木幹夫『余白の時間 辻征夫さんの思い出』を起点にー」)で取り上げた小冊子もこの棚で出会いました。

 真ん中の棚は、民俗学の関係本も多そうで、『鎌倉江の島七福神』という美装本が横置きされていたりしますが、広く女性の暮らしに関わるもの、インテリア、ファッション、旅、趣味関係の単行本と雑誌が中心となっています。

 その右側、入り口に一番近い棚は([23])、広く食物、食事、料理の本が中心です。ちょっと異質な塩野七生のコレクションも並んでいますが、食にかかる硬派の書き手である平松洋子の著作物が目立っています。全体としては辰巳芳子をはじめとする実践的な料理関係の本が大半で、レシピなどのムック本も大変よく揃っています。

    [22]右壁部の前方のほぼ全景

    [23]右壁部の前方の入り口カウンターから2本の棚

◉入り口すぐの右壁部

 そして最後のパートです。この細長手の長方形である店内の紹介は、まず中央部から始まり、いったん入り口付近に戻って、左壁部から奥壁部、そして右壁部をぐるっと周回してきました。再び入り口まで来ると、右壁部に、店主の居場所、カウンターがあります([24])。

 ここは、PCがおかれていて諸作業を行う場所であるとともに、レジとなっています。何より、たくさんのお客様との挨拶や接客の場でもあります。今は「仕切り設置」として透明シートがかけられていますが、それでも店主の明るく元気な声が響いてきます。店主のフレンドリーな性格もあってか、これまでの積み重ねというか、とにかく馴染みの客、声をかけ合う関係の人たちの多いのが、この店の大切な特徴でもあり資産でもあります。なお、店主の弟さんも、曜日が限られますが、店を手伝っています。

 ふだんは見ることのないカウンターの後ろの棚を写真のズームで見ていたら、めずらしい物・本が並んでいて驚きました。その中に近所の喫茶店と関係があるのかどうかわかりませんが、「ポエム」のネーム入りコーヒーカップ・ソーサーを発見してうれしくなりました。

    [24]入り口すぐの右壁部のカウンター

 

 以上が、古本屋「花森書林」の店内の様子です。その魅力を伝えておきたいと思い立ったのはよかったのですが、写真を見て思いついたことを並べただけの内容になりました。こんなことで遊んでしまったという反省もあります。

 でも、元町に行かれるような機会があれば、一度立ち寄ってみられたらいかがでしょうか。本にとってよい居場所であることは、本好きの方にとっても楽しい居場所になることに通じています。

 店主のモットーは、花森書林が「お客様の気軽にお立ち寄りいただける場所」であることなのですから。

 

 私が前のトンカ書店を初めて訪ねたのは、六甲の「口笛文庫」に初めて行った頃か、もう少しあとのことでしょうから、やはり10年ぐらいのお付き合いになるのでしょうか。店主とは本のことはもちろんのこと、海外旅行などの私的なことも話したりもする間柄となりました。この間、店主は二人のお子さんの出産もあり、前に入居していたビルのメンテナンス問題もあって、いつも大変だなと遠くからみてきました。

 今の場所に移転して、ほんとによかったなあと思っています。前の穴倉的な感じも嫌いではないのですが、やはり場所の力と全面ガラス張りの開放性が貢献しているのか([25])、明るく健康的というところが何よりです。その移転のとき、心機一転という言葉で心境を語っていましたが、今回の休業を経た営業再開もまた、そんな意欲の感じられる準備内容になった、つまり本にとっても客にとってもよりよい居場所になったと、私は感じています。これからの花森書林にとって、なかなか大変だったけれど、逆にとてもよい機会となったといえそうです。

 くりかえすことになりますが、花森書店が本と雑貨のよい居場所であり、かつお客様のよい居場所であり続けることを願うばかりです。

 

 昨年「70歳問題」などと当ブログで書いたりしていましたが、時は止まってくれなくて、昨日、誕生日ということで、71歳になりました。何と表現していいものか、あきれてただ乾杯するだけです。

 ですから、花森書林の店主、そして口笛文庫の店主には、もうしばらく通えると思うのでよろしくとお願いしておくしかありません。

  [25]カウンターあたりから撮影した入り口付近

 

コメント
管理者の承認待ちコメントです。
  • -
  • 2020.07.30 Thursday 08:15
コメントする








 
プロフィール
profilephoto
70代前半。兵庫県在住。ニックネームは「パンテオンの穴」。
リタイア後の日々の中で思いを泳がせて、あるいは思いが泳いで 感じたこと、考えたことなどを、のんびりと綴っています。
                         
最新の記事
                         
カテゴリー
カレンダー
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< October 2020 >>
                                      
月別更新一覧
            
コメント
                                      
リンク
                        
サイト内検索
Others
            
Mobile
qrcode
            
Powered by
30days Album
無料ブログ作成サービス JUGEM